上腕骨近位端骨折って?

上腕骨近位端骨折をご存じですか?

 

上腕骨は二の腕部分の骨で、近位端とは付け根に近い部分のことです。

腕の付け根で折れてしまう骨折のことを上腕骨近位端骨折といいます。

 

高齢者に多い四大骨折は、

手首の骨折(橈骨遠位端骨折)、

肩の付け根の骨折(上腕骨頚部骨折)

背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)

太ももの付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)

があり、上腕骨近位端骨折はその中の1つです。

今回は、上腕骨近位端骨折を一緒にみていきましょう。

 

 

症状

外傷受傷が多く、受傷後より急速に痛みと上肢(腕)の挙上が困難になります。

見た目の変化として、上腕部の変形や腫れがみられることもあります。また、出血し、数日経過してから皮下出血ができることがあります。

骨折部位によっては、腋窩神経損傷や腋窩動静脈損傷などを発症する可能性もあります。

また骨折後の転移度合いで上腕骨頭壊死の可能性もあります。

 

上腕骨近位端骨折の8-9割は、ご高齢の方が転倒した時に発生します。

自分で肩を守ろうと強い力を入れることで粉砕した形の骨折になったり、直接腕の付け根を打撲して骨折したりします。

若い方では、交通事故やフルコンタクトスポーツ等で激しく非常に強い力がかかった時、肩関節が脱臼した時に発生する可能性があります。

 

診断 

骨折が疑われる際には、単純レントゲン写真撮影が行われます。

複数箇所に骨折を生じたり、脱臼を併発したりすることがあるため、多方向からレントゲン写真を撮影します。

また、より詳細な評価を行うために、CTやMRI撮影が行われることもあります。

 

治療

基本的には肩関節は許容範囲の大きな関節ですので、手術は避け保存療法で治療することが原則です。

ですが、転位(ずれ)や変形が大きなときには手術を行います。

 

 手術は大きく分けて以下のようなものがあります。

・観血的整復固定術
骨折部の転位(ずれ)を矯正し、プレートやスクリューで固定します。

・人工骨頭置換術
骨折部の粉砕が強い場合には、将来的に骨頭壊死の可能性が高いため、人工の骨頭を設置する必要があります。

 

骨転位がない場合は、三角巾やバストバンドを用いて腕を固定して、転位の予防や安静を図ります。

この状態で骨が結合するまで経過観察を行いつつ、経過に合わせてリハビリテーションを行います。

(バストバンド提供:池上義肢製作所)

 

手術後のリハビリ

術後経過に合わせて運動負荷をかけてリハビリテーションを行うことは必須です。

術後は仮骨形成が始まる約3週間まで固定を行います。

固定期間中は、肩関節以外の肘関節や手関節、手指の運動を行い術後の腫脹(腫れ)の軽減と握力の低下を起こさないように運動を実施します。

固定期間が終了すると徐々に自動運動(関節可動域運動)や筋力運動などを行なっていきます。

 

保存療法のリハビリ

保存療法では、三角巾やバストバンドを用いて腕を固定して、転位の予防や安静を図ります。

この状態で骨癒合が見られるまで経過観察を行いつつ、経過に合わせてリハビリテーションを行います。

保存療法では、急激な回旋運動(捻り運動)や荷重には特に気をつけ、骨癒合に合わせて、自動介助運動(反対の手で骨折側の腕を上げる運動)などを実施します。

低負荷で筋力運動などを実施していき徐々に負荷を上げます。

 

 

骨粗鬆症の治療によって骨強度を改善すれば骨折のリスクが低くなります。

もし骨強度が低くても、外力が加わらなければ骨折のリスクが低いです。

高齢者の上腕骨近位端骨折はその多くが転倒・転落によって発生します。そのため、その予防には骨粗鬆症の予防・治療とともに転倒予防が挙げられます。

転倒予防のために日頃から、筋力や運動能力の低下など予防が大切です。

 

 

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